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カンファレンス特別対談
『サステナブルを流行にしない。』の様子をお届けします。
カンファレンス特別対談『サステナブルを流行にしない。』の様子をお届けします。

2021年5月30日(ゴミゼロの日)、CHOICE! ZERO WASTE AWARD2021 の「認定製品発表・カンファレンス」が実施されました。第3部では「サステナブルを流行にしない。ゴミゼロの未来のために、私にできるCHOICEとは」をテーマに、SUTE.lab(ステラボ)のメンバーである石坂産業株式会社 代表取締役 石坂典子さんと、一般社団法人ZERO WASTE JAPANの代表理事 坂野晶さんの対談を行いました。モデレーターは株式会社パラドックス 執行役員、鈴木祐介さんです。

INDEX

廃棄物の現場から、思うこと。

石坂 (石坂産業株式会社)

私はこの仕事に携わって30年が経ちましたが、毎日毎日たくさんの廃棄物を見続けていて、日々運ばれてくる廃棄物の中身がどんどんリサイクルしにくくなっていると感じます。普段皆さんはそんな風にゴミを見ることってほとんどないですよね。いらなくなった不要な物がそのまま燃やされてしまったり、埋め立てられてしまったり、もっと悪い言い方をするとそれが川に流れて海に流れて、たくさんの地球の中にいる生物に影響を与えているとしたら。こんなに悲しいことはないと思うんですよね。作られた製品が「どうやって廃棄されていくのか」ということまで考えて、物作りの設計やデザインをされているか。そのことを社会に問うていかなくては、本当の意味でのサーキュラエコノミーという経済にはならない。改めて「捨てる」という出口の側から社会を見るということを考えていきながら、どう「リ・デザイン」していくかをSUTE.labのメンバーと協議してきました。そして、一人でも多くの人に選択するものをちょっとでも変えてもらったら良いんじゃないかなと思ってこのCHOICE! ZERO WASTE AWARDというのを今回開催させてもらったということになります。

鈴木

ありがとうございます。ゼロウェイストに取り組まれている中でのお考えや、ゼロウェイストに近づく方法が少しでもありましたら坂野さんに是非お伺いしたいなと思います。

坂野さん

まさに「廃棄物の現場から思うこと」に寄せて先にお話しをさせて頂くと、私自身、廃棄物の中間処理と呼ばれる、ゴミが集まってきてそこで分別をしてそこからまた石坂さんのように最終の処理をして頂くような業者さんに引き取ってもらう、中間拠点の運営に携わっていたんですね。ご家庭から生活者の方が出したゴミがまずやってくる場所です。そこで改めて、ゴミというのは本当に私たちの生活のそのままの表れであるということを実感したんです。生活必需品と思うものもある一方で、これまだ使えるよなと思うようなものもたくさんあったり。日本のリサイクル率は大体20%弱です。実は世界的に見ても日本のリサイクル率って非常に低いです。ヨーロッパやアメリカのリサイクル率は、大体40%を越えてきているというのが現状です。日本の場合、リサイクルしていないでゴミを燃やしている。世界でゴミで燃やしている割合が一番高いのが日本なんです。

鈴木

なるほど。そういう実態があるということを、私たちは普段全然気にせずに暮らしている。

坂野さん

もう一つ非常に難しいなと思っていることが、燃やしているゴミの中に生ゴミを入れていますよね。生ゴミというのは非常に燃えにくいので、たくさん熱が必要になってくるんです。プラスチックを減らしていこうという流れがある中で、焼却炉で生ゴミを燃やす為にむしろプラスチックゴミが必要なんだよという風に考えている自治体もあったりするわけです。そういう矛盾が生まれていたりするというのが制度の実態なんですよね。

同じような課題が制度だけではなくて、製品を作る側にもあると思っています。一つだけ補足させて頂くと、「Right to repair」という考え方が最近ヨーロッパを中心に広がっています。「修理する権利」ということなのですが、簡単に壊れるような設計、あるいは自分たちで修理できないような設計というのは法律違反である、というぐらいの考え方が出てきています。例えば、家電製品など、自分で修理をしてパーツを入れ替えることができれば全部を買い替える必要もないし、買い替えた物を捨てる必要もないかもしれない。しかし、中が開けられないような設計になっていたり、すぐに壊れて次の物を買うような前提で製品設計がされていたりということも実態として今もあるわけですよね。そういう考え方、制度やデザインの在り方というものを見直していく時が来ています。物を作って捨てて終わりという一方通行ではなくて、ちゃんとループにして繋いでいこうよというのが、今回の捨てる現場から見た視点として大事だなと思っております。

鈴木

プラスチックが場合によっては焼却に必要だという話、そうなんだと個人的にはやるせなくなる気持ちもありますね…。ループにしていくという話が最後ありましたけれども、何か身近な製品でも海外の製品でも、これは上手くやっているなという事例はありますか?

坂野さん

まさにパソコンの事例でZERO PCさんが認定を受けられましたけれども、携帯も自分でアップデートできるように実践されているのが、「フェアフォン」と呼ばれるブランドです。買った人が自分で携帯を分解できるんです。例えば、カメラの機能がアップグレードされたらカメラの部分だけ付け替えることができる。そもそも、「紛争鉱物」という言葉があるように、鉱物資源を取る為に紛争を起こしていて、私たちが携帯を使うだけで紛争を起こすことに実は間接的に貢献しているかもしれないという実態があるんです。そういうことを引き起こさないようなルートや、児童労働のない環境で作られたものだけを使っていますというトレーサビリティが透明になっています。こういった循環型のモデルは、そういう製品が生まれてくるということ自体がまず素晴らしいのに加えて、新しくマーケットが生まれるという点においても、非常に希望に満ちているなと思っています。

鈴木

今回、大きなテーマとして「サステナブルを流行にしない」というちょっと意味深なタイトルを付けさせて頂きました。。サステナブルという言葉、SDGsという言葉、いろんなものがあって、いろんなところで聞くようになりました。是非お二人に、「サステナブルな社会って何ですか?」と問われたらどう答えるんだろうというのをお伺いしたいです。

そもそも「ゼロウェイスト」とは何なのか?

石坂

まず、ゼロウェイストという考え方についてお話したいと思います。ゼロウェイストとは「ゴミがゼロになる」という意味でもないですし、それも一つの方法ではあるものの、勘違いされてしまうと困るなと思っています。 

坂野さん

確かにゼロウェイストという言葉、まさに今回の根幹にあるんですが、ゼロウェイストという話の前にそもそも、ゴミって改めて何でしたっけ?って話を皆さんに考えて頂きたいなと思います。大抵の方が「もういらない物」「使えなくなった物」と色々再定義してくださるんです。では、「使えなくなった」「いらない」とかって、誰が決めてるんですかというところなんですね。

鈴木

なるほど。たしかに言われてみれば。

坂野さん

これは凄く主観的な判断だなって思っています。もちろん誰もが見ても使えないというような物もあるかもしれないんですけれど、基本的にゴミ箱に捨てる捨てないという判断は無意識のうちに自分でしているわけですね。例えば、これはあんまり着てないから捨てよう、とか。逆に言うと、仕組みや、私たち一人一人の見方や意識、行動を変えることで、実はゴミって圧倒的に減るのではないかということが、ゼロウェイストという考え方の根本にあります。もともと自然界にはゴミっていう考え方はなかった。私たちが社会の中でゴミというものを作ってきたというのが歴史です。なので、そういったエラーを減らしていくことがゼロウェイストということに近いんじゃないかなと思います。

石坂

その人にとって「もういらない」とゴミ箱に捨てるような物が、たとえば「でも機能としてはまだ使えるから誰かに譲りたい」と思えたら、これがゴミでなくなる瞬間だと思うんですよ。使い続けて商品そのものが傷んできても、実はその経年変化をしたものに更に価値が出るというケースももちろんあります。北欧だと、一人暮らしを始めた時に物凄く高価なお鍋を渡して、生涯そのお鍋を使い続けるなんてこともあるんです。

鈴木

モノに対して、長く愛着を持って接していく、という考え方ですね。

石坂

私たちが人間優先で、あまりにも物を作り過ぎたことが、すべての背景にはあると思っています。限られた資源をどんどん使って、色々なモノやファッションが売買されている。まだ使えるのに、あっという間に「古いモノ」とされて、また新しいモノをつくる。その間にも、物凄いプロセス・コストがかかります。私たちが今後地球で生活していくときに、人間中心のモノづくり前提にせずに考えていくところから、本当の意味でのサステナブルな社会に入っていくんじゃないかなと。どうですかね。

坂野さん

本当にそうですよね。例えば私たちが使っている化石燃料も、視点を変えると、大昔生きていた生物とつながっている。もしかしたら恐竜が変化したものを、今燃やして使っているかもしれない。自然のサイクルの中では本来、再生されていく過程に凄く時間がかかる。その恩恵を受けて私たちは暮らしていると思うんです。そのサイクルが私たちの社会というフレームの中においては、本当に早すぎるんだよなというのは凄く実感することです。

鈴木

是非追加でお伺いしたいなと思ったんですけど、お話の中で最初にまずゴミとは何かというテーマから始まりましたよね。子供って結構何でもゴミにしないなって思います。でもいつからか知らない間にこれはゴミだとする人になっています。これは教育なのか、社会の常識に染まっていってるのかわからないですが、実は教育って物凄く大事なんじゃないかなと。どういうことをこれからの子供達やみんなに伝えていかなければいけないのか、お二人の考えをお聞かせいただけますか?

石坂

3年ぐらい前にインターン生でカザフスタンの子が来ていました。彼女は凄く日本語も堪能で、環境に意識が高かったので是非石坂で働かない?と声を掛けたことがあったんだけど、彼女がこういう風に説明してくれたんです。「私たちの国では先進国の人から様々な設備とかを用意してもらうことが多いです。例えば街中にゴミ箱を設置してもらったりするんです。ところが私たちは小さい時からゴミをゴミ箱に捨てるという教育を受けてきませんでした。だから僅か10m先のゴミ箱に街の人たちは捨てに行くことができないんです。だから私は教育を変える為に国に帰って、国を変える仕事がしたい。」って彼女言ってたんですよ。すごい事を言う二十歳だなと思ったんです。やっぱり私たちが小さい時から家庭教育で、どうやってモノを扱っていくかっていうのは両親から教わってきたことが多いと思うんです。

鈴木

そうですよね。

石坂

今、会社でも子どもたちの環境教育ということで「場」を貸しているんですけれど、決して十分なモノがあるわけじゃないんですね。モノがなくても楽しめるということを体験してもらうことで、考え方を少し変えていく。フィンランドの幼稚園では、子どもたちは学校の宿題がないんです。それはなぜかと言うと、森の中に行って様々な体験をすることで様々な環境があることを学んで人は大きくなっていくという考えなんですね。だから環境に配慮した子どもたちが育つなんてことを先生が言われていたんです。本当に教育なくして環境は変えられないというのが私の考えでもあるので、凄く大事だなと思っています。

坂野さん

例えば、ゴミに関しては小学4年生や5年生ぐらいで皆さん必ず学ぶことになっていますけど、でもそこで学ぶことが3Rという言葉と、実際にクリーンセンターやゴミ焼却場とかを見学に行って、自分たちの自治体ではどう分別しているか見てみましょう、ぐらいが関の山です。決まったものが提供される豊かさと、逆に提供されることによって他がなくなってしまう貧しさみたいなものが同時に起こっているなという気がしています。そこでせっかくゴミを学ぶのに、普段自分たちが使っている物を大事にしようとか、どうすればゴミにならないんだろうかという思考には繋がらないわけですよね。子どもの視点で本来はそこまで捉えているはずなのに、接続がない形で教えられてしまっているなというのは、実際私も環境教育に関わらせてもらう機会があると思うことです。

鈴木

ありがとうございます。

「ゴミゼロの未来のために、一人ひとりにできるCHOICEとは?」

鈴木

まさに今日の本題にもなりそうなところではあるんですけれども、私たちは「CHOICE! ZERO WASTE」という形で、一人一人が何を選ぶかということが世の中を変えていく一歩になるんじゃないか、そんなことを思ってやっているわけですけれども。「ゴミゼロの未来のために、一人ひとりにできるCHOICEとは?」何なんでしょうか。これを聞いた方が、これだったら私もできるかもしれないなとか、意識できるかもしれないなとか、そんなものを持ち帰って頂けると良いなと思っています。

石坂

一人一人にできるチョイスって色々あると思うんです。例えば、私はどういうライフスタイルで幸せを感じるんだろうということをちゃんと突き詰めていくと、こだわりたくて絶対欲しい物と、不要な物っていうのが明確になってくるんじゃないかなと思うんですね。こういうところを大切にしたいから、こういう物にはこだわって買っていくけれども、それ以外の物はいらないっていう選択をしていくという方法も一つあるかなと思います。あとは人が使った物をどう見るかってことだと思うんですよ。私は特にアンティーク的な50年100年経ったような物が好きで、敢えてそういう物を積極的に買ったりするんです。色んな人達の手が渡ってきて、目の前にある物ってもう同じ時を過ごせない物だったりするわけですよ。そう考えると物凄く愛情が湧くような、もっと大切に次に渡していけるように育てていくような感覚で私は物を選んだりします。もちろんモノを買ってもらって良いわけで、ただその買い方を少し意識して、背景が見える物を選んでいくことで、社会構造全体も、企業も変わっていく。自分自身これから何を大切にしていこうか、その中で本当に大切に使い続けられる物を選んで生活の中に取り入れることが大切かなと思います

坂野さん

私も心地良さだと思うんですよね。例えば、物がごちゃごちゃあるのと、すっきりしているのだとどっちが気持ち良いかみたいな話でもあるかもしれない。例えば服って、こういうファッションセンスが良いからこれを選ぶとかって、なかなか難しいじゃないですか。特に若い世代である程度色々試したいみたいなこともあって、そういうのは全然否定することじゃないと思っています。ただそこで自分の感覚を研ぎ澄ますというのはもちろん大事です。色んな物を試したい時にも、何でも良いから選んで、合わなかったから捨てるのではなくて、他の人が良いと思って丁寧に使ってきた物を、自分だとこれをどう考えるかなって選んでみると、センスが磨かれるわけですよね。

鈴木

とても気付きがありながら聞いておりました。ありがとうございます。最後にお二人から一言ずつメッセージを頂けますか?

終わりに

坂野さん

色んなお話があったと思いますが、本当に全部を突き詰めると確かにこれが足りてない、あれが足りてない、ここができてない、難しいっていう話、自分一人でやってもなかなか変わらないかもしれないっていう話になってしまうかもしれないんです。けれど、自分の感覚としてやっぱり良いよねというものを応援しようとか、自分にとって豊かだなとか、自分にとって心地が良いなという形で設定をしていくしかないのかなと思うのです。そんな感覚で色んなものを見て欲しいし、足りないことが悪いのではなくて、逆にこういうことってやらないんですかっていうことを、声を掛けてあげるということもすごく大事だと思います。選ぶということもそうだし、選びつつ応援するというアクションができていくと、本当に色んな方達が応援するマインドで物事を進めていけるようになるんじゃないかなと思っています。

石坂

本当に今回アワードに対してたくさんの応募を頂きました。その中で本当に私たちも何度も何度も話し合いを重ねながら、モノを作るって一体どういうことなんだろうって考えたんですね。ただ良い物だから是非使ってねといったメッセージだけでは、やっぱり持続可能なサステナブルな社会は生まれないという風に考えたんです。どういう想いで作って、どういう背景があったのか、いずれはどうしていった方が良いと思っているのか。そういう明確なビジョンとメッセージを持った商品に最終的には認定を出していこうという風に決めました。今日ご覧いただいている皆さまにも、これからの未来に向けて、応援したい商品って一体何かっていう目線で物を買って頂きたいですし、また作り手の皆さんには廃棄されるそのプロセスまで、どうしたらまた単純なゴミにならないかっていうところもきちんとビジョンを掲げて頂いて、消費者に届く形で出して頂けたら嬉しいなという風に思いました。また、メンバーと共に来年も継続してこの活動は続けていきます。より多くの商品に「CHOICE!」の認定マークをつけることができるようになって、そして、こういう商品を選ぶことが持続可能な未来に繋がるんだという風に、社会にメッセージを届けられたら良いなと考えています。

鈴木

お二方、本日は大変ありがとうございました!

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