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2021年5月30日(ゴミゼロの日)、CHOICE! ZERO WASTE AWARD2021 の「認定製品発表・カンファレンス」が実施されました。第3部では「サステナブルを流行にしない。ゴミゼロの未来のために、私にできるCHOICEとは」をテーマに、SUTE.lab(ステラボ)のメンバーである石坂産業株式会社 代表取締役 石坂典子さんと、一般社団法人ZERO WASTE JAPANの代表理事 坂野晶さんの対談を行いました。モデレーターは株式会社パラドックス 執行役員、鈴木祐介さんです。

廃棄物の現場から、思うこと。

石坂 (石坂産業株式会社)

私はこの仕事に携わって30年が経ちましたが、毎日毎日たくさんの廃棄物を見続けていて、日々運ばれてくる廃棄物の中身がどんどんリサイクルしにくくなっていると感じます。普段皆さんはそんな風にゴミを見ることってほとんどないですよね。いらなくなった不要な物がそのまま燃やされてしまったり、埋め立てられてしまったり、もっと悪い言い方をするとそれが川に流れて海に流れて、たくさんの地球の中にいる生物に影響を与えているとしたら。こんなに悲しいことはないと思うんですよね。作られた製品が「どうやって廃棄されていくのか」ということまで考えて、物作りの設計やデザインをされているか。そのことを社会に問うていかなくては、本当の意味でのサーキュラエコノミーという経済にはならない。改めて「捨てる」という出口の側から社会を見るということを考えていきながら、どう「リ・デザイン」していくかをSUTE.labのメンバーと協議してきました。そして、一人でも多くの人に選択するものをちょっとでも変えてもらったら良いんじゃないかなと思ってこのCHOICE! ZERO WASTE AWARDというのを今回開催させてもらったということになります。

鈴木

ありがとうございます。ゼロウェイストに取り組まれている中でのお考えや、ゼロウェイストに近づく方法が少しでもありましたら坂野さんに是非お伺いしたいなと思います。

坂野さん

まさに「廃棄物の現場から思うこと」に寄せて先にお話しをさせて頂くと、私自身、廃棄物の中間処理と呼ばれる、ゴミが集まってきてそこで分別をしてそこからまた石坂さんのように最終の処理をして頂くような業者さんに引き取ってもらう、中間拠点の運営に携わっていたんですね。ご家庭から生活者の方が出したゴミがまずやってくる場所です。そこで改めて、ゴミというのは本当に私たちの生活のそのままの表れであるということを実感したんです。生活必需品と思うものもある一方で、これまだ使えるよなと思うようなものもたくさんあったり。日本のリサイクル率は大体20%弱です。実は世界的に見ても日本のリサイクル率って非常に低いです。ヨーロッパやアメリカのリサイクル率は、大体40%を越えてきているというのが現状です。日本の場合、リサイクルしていないでゴミを燃やしている。世界でゴミで燃やしている割合が一番高いのが日本なんです。

鈴木

なるほど。そういう実態があるということを、私たちは普段全然気にせずに暮らしている。

坂野さん

もう一つ非常に難しいなと思っていることが、燃やしているゴミの中に生ゴミを入れていますよね。生ゴミというのは非常に燃えにくいので、たくさん熱が必要になってくるんです。プラスチックを減らしていこうという流れがある中で、焼却炉で生ゴミを燃やす為にむしろプラスチックゴミが必要なんだよという風に考えている自治体もあったりするわけです。そういう矛盾が生まれていたりするというのが制度の実態なんですよね。

同じような課題が制度だけではなくて、製品を作る側にもあると思っています。一つだけ補足させて頂くと、「Right to repair」という考え方が最近ヨーロッパを中心に広がっています。「修理する権利」ということなのですが、簡単に壊れるような設計、あるいは自分たちで修理できないような設計というのは法律違反である、というぐらいの考え方が出てきています。例えば、家電製品など、自分で修理をしてパーツを入れ替えることができれば全部を買い替える必要もないし、買い替えた物を捨てる必要もないかもしれない。しかし、中が開けられないような設計になっていたり、すぐに壊れて次の物を買うような前提で製品設計がされていたりということも実態として今もあるわけですよね。そういう考え方、制度やデザインの在り方というものを見直していく時が来ています。物を作って捨てて終わりという一方通行ではなくて、ちゃんとループにして繋いでいこうよというのが、今回の捨てる現場から見た視点として大事だなと思っております。

鈴木

プラスチックが場合によっては焼却に必要だという話、そうなんだと個人的にはやるせなくなる気持ちもありますね…。ループにしていくという話が最後ありましたけれども、何か身近な製品でも海外の製品でも、これは上手くやっているなという事例はありますか?

坂野さん

まさにパソコンの事例でZERO PCさんが認定を受けられましたけれども、携帯も自分でアップデートできるように実践されているのが、「フェアフォン」と呼ばれるブランドです。買った人が自分で携帯を分解できるんです。例えば、カメラの機能がアップグレードされたらカメラの部分だけ付け替えることができる。そもそも、「紛争鉱物」という言葉があるように、鉱物資源を取る為に紛争を起こしていて、私たちが携帯を使うだけで紛争を起こすことに実は間接的に貢献しているかもしれないという実態があるんです。そういうことを引き起こさないようなルートや、児童労働のない環境で作られたものだけを使っていますというトレーサビリティが透明になっています。こういった循環型のモデルは、そういう製品が生まれてくるということ自体がまず素晴らしいのに加えて、新しくマーケットが生まれるという点においても、非常に希望に満ちているなと思っています。

鈴木

今回、大きなテーマとして「サステナブルを流行にしない」というちょっと意味深なタイトルを付けさせて頂きました。。サステナブルという言葉、SDGsという言葉、いろんなものがあって、いろんなところで聞くようになりました。是非お二人に、「サステナブルな社会って何ですか?」と問われたらどう答えるんだろうというのをお伺いしたいです。

そもそも「ゼロウェイスト」とは何なのか?

石坂

まず、ゼロウェイストという考え方についてお話したいと思います。ゼロウェイストとは「ゴミがゼロになる」という意味でもないですし、それも一つの方法ではあるものの、勘違いされてしまうと困るなと思っています。 

坂野さん

確かにゼロウェイストという言葉、まさに今回の根幹にあるんですが、ゼロウェイストという話の前にそもそも、ゴミって改めて何でしたっけ?って話を皆さんに考えて頂きたいなと思います。大抵の方が「もういらない物」「使えなくなった物」と色々再定義してくださるんです。では、「使えなくなった」「いらない」とかって、誰が決めてるんですかというところなんですね。

鈴木

なるほど。たしかに言われてみれば。

坂野さん

これは凄く主観的な判断だなって思っています。もちろん誰もが見ても使えないというような物もあるかもしれないんですけれど、基本的にゴミ箱に捨てる捨てないという判断は無意識のうちに自分でしているわけですね。例えば、これはあんまり着てないから捨てよう、とか。逆に言うと、仕組みや、私たち一人一人の見方や意識、行動を変えることで、実はゴミって圧倒的に減るのではないかということが、ゼロウェイストという考え方の根本にあります。もともと自然界にはゴミっていう考え方はなかった。私たちが社会の中でゴミというものを作ってきたというのが歴史です。なので、そういったエラーを減らしていくことがゼロウェイストということに近いんじゃないかなと思います。

石坂

その人にとって「もういらない」とゴミ箱に捨てるような物が、たとえば「でも機能としてはまだ使えるから誰かに譲りたい」と思えたら、これがゴミでなくなる瞬間だと思うんですよ。使い続けて商品そのものが傷んできても、実はその経年変化をしたものに更に価値が出るというケースももちろんあります。北欧だと、一人暮らしを始めた時に物凄く高価なお鍋を渡して、生涯そのお鍋を使い続けるなんてこともあるんです。

鈴木

モノに対して、長く愛着を持って接していく、という考え方ですね。

石坂

私たちが人間優先で、あまりにも物を作り過ぎたことが、すべての背景にはあると思っています。限られた資源をどんどん使って、色々なモノやファッションが売買されている。まだ使えるのに、あっという間に「古いモノ」とされて、また新しいモノをつくる。その間にも、物凄いプロセス・コストがかかります。私たちが今後地球で生活していくときに、人間中心のモノづくり前提にせずに考えていくところから、本当の意味でのサステナブルな社会に入っていくんじゃないかなと。どうですかね。

坂野さん

本当にそうですよね。例えば私たちが使っている化石燃料も、視点を変えると、大昔生きていた生物とつながっている。もしかしたら恐竜が変化したものを、今燃やして使っているかもしれない。自然のサイクルの中では本来、再生されていく過程に凄く時間がかかる。その恩恵を受けて私たちは暮らしていると思うんです。そのサイクルが私たちの社会というフレームの中においては、本当に早すぎるんだよなというのは凄く実感することです。

鈴木

是非追加でお伺いしたいなと思ったんですけど、お話の中で最初にまずゴミとは何かというテーマから始まりましたよね。子供って結構何でもゴミにしないなって思います。でもいつからか知らない間にこれはゴミだとする人になっています。これは教育なのか、社会の常識に染まっていってるのかわからないですが、実は教育って物凄く大事なんじゃないかなと。どういうことをこれからの子供達やみんなに伝えていかなければいけないのか、お二人の考えをお聞かせいただけますか?

石坂

3年ぐらい前にインターン生でカザフスタンの子が来ていました。彼女は凄く日本語も堪能で、環境に意識が高かったので是非石坂で働かない?と声を掛けたことがあったんだけど、彼女がこういう風に説明してくれたんです。「私たちの国では先進国の人から様々な設備とかを用意してもらうことが多いです。例えば街中にゴミ箱を設置してもらったりするんです。ところが私たちは小さい時からゴミをゴミ箱に捨てるという教育を受けてきませんでした。だから僅か10m先のゴミ箱に街の人たちは捨てに行くことができないんです。だから私は教育を変える為に国に帰って、国を変える仕事がしたい。」って彼女言ってたんですよ。すごい事を言う二十歳だなと思ったんです。やっぱり私たちが小さい時から家庭教育で、どうやってモノを扱っていくかっていうのは両親から教わってきたことが多いと思うんです。

鈴木

そうですよね。

石坂

今、会社でも子どもたちの環境教育ということで「場」を貸しているんですけれど、決して十分なモノがあるわけじゃないんですね。モノがなくても楽しめるということを体験してもらうことで、考え方を少し変えていく。フィンランドの幼稚園では、子どもたちは学校の宿題がないんです。それはなぜかと言うと、森の中に行って様々な体験をすることで様々な環境があることを学んで人は大きくなっていくという考えなんですね。だから環境に配慮した子どもたちが育つなんてことを先生が言われていたんです。本当に教育なくして環境は変えられないというのが私の考えでもあるので、凄く大事だなと思っています。

坂野さん

例えば、ゴミに関しては小学4年生や5年生ぐらいで皆さん必ず学ぶことになっていますけど、でもそこで学ぶことが3Rという言葉と、実際にクリーンセンターやゴミ焼却場とかを見学に行って、自分たちの自治体ではどう分別しているか見てみましょう、ぐらいが関の山です。決まったものが提供される豊かさと、逆に提供されることによって他がなくなってしまう貧しさみたいなものが同時に起こっているなという気がしています。そこでせっかくゴミを学ぶのに、普段自分たちが使っている物を大事にしようとか、どうすればゴミにならないんだろうかという思考には繋がらないわけですよね。子どもの視点で本来はそこまで捉えているはずなのに、接続がない形で教えられてしまっているなというのは、実際私も環境教育に関わらせてもらう機会があると思うことです。

鈴木

ありがとうございます。

「ゴミゼロの未来のために、一人ひとりにできるCHOICEとは?」

鈴木

まさに今日の本題にもなりそうなところではあるんですけれども、私たちは「CHOICE! ZERO WASTE」という形で、一人一人が何を選ぶかということが世の中を変えていく一歩になるんじゃないか、そんなことを思ってやっているわけですけれども。「ゴミゼロの未来のために、一人ひとりにできるCHOICEとは?」何なんでしょうか。これを聞いた方が、これだったら私もできるかもしれないなとか、意識できるかもしれないなとか、そんなものを持ち帰って頂けると良いなと思っています。

石坂

一人一人にできるチョイスって色々あると思うんです。例えば、私はどういうライフスタイルで幸せを感じるんだろうということをちゃんと突き詰めていくと、こだわりたくて絶対欲しい物と、不要な物っていうのが明確になってくるんじゃないかなと思うんですね。こういうところを大切にしたいから、こういう物にはこだわって買っていくけれども、それ以外の物はいらないっていう選択をしていくという方法も一つあるかなと思います。あとは人が使った物をどう見るかってことだと思うんですよ。私は特にアンティーク的な50年100年経ったような物が好きで、敢えてそういう物を積極的に買ったりするんです。色んな人達の手が渡ってきて、目の前にある物ってもう同じ時を過ごせない物だったりするわけですよ。そう考えると物凄く愛情が湧くような、もっと大切に次に渡していけるように育てていくような感覚で私は物を選んだりします。もちろんモノを買ってもらって良いわけで、ただその買い方を少し意識して、背景が見える物を選んでいくことで、社会構造全体も、企業も変わっていく。自分自身これから何を大切にしていこうか、その中で本当に大切に使い続けられる物を選んで生活の中に取り入れることが大切かなと思います

坂野さん

私も心地良さだと思うんですよね。例えば、物がごちゃごちゃあるのと、すっきりしているのだとどっちが気持ち良いかみたいな話でもあるかもしれない。例えば服って、こういうファッションセンスが良いからこれを選ぶとかって、なかなか難しいじゃないですか。特に若い世代である程度色々試したいみたいなこともあって、そういうのは全然否定することじゃないと思っています。ただそこで自分の感覚を研ぎ澄ますというのはもちろん大事です。色んな物を試したい時にも、何でも良いから選んで、合わなかったから捨てるのではなくて、他の人が良いと思って丁寧に使ってきた物を、自分だとこれをどう考えるかなって選んでみると、センスが磨かれるわけですよね。

鈴木

とても気付きがありながら聞いておりました。ありがとうございます。最後にお二人から一言ずつメッセージを頂けますか?

終わりに

坂野さん

色んなお話があったと思いますが、本当に全部を突き詰めると確かにこれが足りてない、あれが足りてない、ここができてない、難しいっていう話、自分一人でやってもなかなか変わらないかもしれないっていう話になってしまうかもしれないんです。けれど、自分の感覚としてやっぱり良いよねというものを応援しようとか、自分にとって豊かだなとか、自分にとって心地が良いなという形で設定をしていくしかないのかなと思うのです。そんな感覚で色んなものを見て欲しいし、足りないことが悪いのではなくて、逆にこういうことってやらないんですかっていうことを、声を掛けてあげるということもすごく大事だと思います。選ぶということもそうだし、選びつつ応援するというアクションができていくと、本当に色んな方達が応援するマインドで物事を進めていけるようになるんじゃないかなと思っています。

石坂

本当に今回アワードに対してたくさんの応募を頂きました。その中で本当に私たちも何度も何度も話し合いを重ねながら、モノを作るって一体どういうことなんだろうって考えたんですね。ただ良い物だから是非使ってねといったメッセージだけでは、やっぱり持続可能なサステナブルな社会は生まれないという風に考えたんです。どういう想いで作って、どういう背景があったのか、いずれはどうしていった方が良いと思っているのか。そういう明確なビジョンとメッセージを持った商品に最終的には認定を出していこうという風に決めました。今日ご覧いただいている皆さまにも、これからの未来に向けて、応援したい商品って一体何かっていう目線で物を買って頂きたいですし、また作り手の皆さんには廃棄されるそのプロセスまで、どうしたらまた単純なゴミにならないかっていうところもきちんとビジョンを掲げて頂いて、消費者に届く形で出して頂けたら嬉しいなという風に思いました。また、メンバーと共に来年も継続してこの活動は続けていきます。より多くの商品に「CHOICE!」の認定マークをつけることができるようになって、そして、こういう商品を選ぶことが持続可能な未来に繋がるんだという風に、社会にメッセージを届けられたら良いなと考えています。

鈴木

お二方、本日は大変ありがとうございました!

「アップサイクルかりゆしウェア」は未利用資源だったさとうきびの絞りカス、「バガス」を原料に、環境負荷の少ない生産工程と回収する仕組みを整え、循環性・持続性がある点が評価され、CHOICE! ZERO WASTE AWARD2021 の認定製品となりました。今回は株式会社Rinnovation代表の山本様に製品の生まれた背景や生産から回収までの仕組み、これからの展望についてお聞かせいただきました。

沖縄の原風景を、残したい

ー改めてこの製品が生まれた背景や想いをお聞かせください。

山本氏 (株式会社Rinnovation代表)

この製品は、ピーク時の3分の1程度に生産が落ち込んでしまった沖縄の基幹作物であるサトウキビの原風景を残したいという想いからスタートしました。私自身、観光系の地域活性化の仕事を前職でさせていただいており、コロナ前まで観光客が増加していた沖縄のポテンシャルを感じていました。ただ、限られた資源の中で観光産業開発のしわ寄せとなった産業の1つが農業だと思います。その中でもサトウキビ産業は、重労働で低賃金なこともあり、ピーク時から生産量も農家の方の数も半分ほどになってしまいました。沖縄にいろんな方が来ていただき、地域経済が発展するのは喜ばしいことです。しかし、沖縄にとって大事なものは次の世代にも残したい、という思いから2018年に株式会社Rinnovationを立ち上げ、地域創生、沖縄のサトウキビ産業をよくするための事業に着手しました。

山本氏 (株式会社Rinnovation代表)

ただ、世界では砂糖の流通が既に十分にされていますし、あまり貢献できることもないだろうと思っていた時に、バガスという存在を知りました。かりゆしの原料となるバガスは、サトウキビの絞りカスです。バガスはこれまで燃えにくいにも関わらずボイラーの中に投げ込んで処理されたり、一部肥料にされる程度にしか利用方法が確立されていませんでした。サトウキビは世界で一番CO2を吸収している作物ですが、燃やしてしまうとまたCO2が排出されてしまいます。カーボンニュートラルの観点ではそれでもいいのかもしれませんが、プラスアルファのことができればサトウキビ産業がさらに環境によい影響を与えられるのではないかと思いました。加えて、アパレル産業は大量生産・大量廃棄により環境負荷の大きい産業です。これを解決できればサトウキビ産業のブランディングにもなるという考えと、地域創生の想いから沖縄独自のウェアであるかりゆしを作ることに決めました。また、かりゆしは縫製業者さんが生きていくために大量に生産し、廃棄されるという背景もあったため、「必要な分だけ作って、着て欲しい」という考えがアップサイクルやシェアリングという仕組みを作る問題意識につながっています。

環境負荷の高い産業に、見えるやさしさを

本アワードは現代社会が抱える大量生産・大量消費、そして大量廃棄の問題を「捨てる」という行為から見直すため、「捨てない」ためのアイデアを形にした商品やサービスを選択し、ゼロ・ウェイストな社会をみんなで目指していこうという想いからスタートしました。

概略

審査基準には、大きく分けて原材料の循環性と、生産の持続性と日々の暮らしへの浸透性という3つがあります。その上で製品自体が廃棄されないような仕組みと運用がなされているか、原料から製造、回収のプロセスにおいて透明性への意識があるかが審査において重視されました。

ー本アワードの審査基準で重要な評価基準になりました、原材料・生産プロセス・回収の仕組みへのこだわりを改めてお聞かせください。

山本氏 (株式会社Rinnovation代表)

ー原材料について

サトウキビという環境への貢献度の高い農作物から出る副産物をアップサイクルすることに価値があると思っています。私たちは、1グラムでも多くのバガスをアップサイクルしたいという思いから、バガスの含有率を20~30%まで突き詰めました。それにより、バガスに入っている成分による消臭効果といった付加価値も得られました。

ー生産プロセスについて

生産プロセスに関しては、大量生産・大量廃棄に追随しないよう、できる限りサプライチェーンを日本国内で開拓しています。もちろん他国の経済に貢献することは重要ですが、近くで作れるならそれに越したことはありません。例えば無理にアフリカから何かを仕入れようとすると、大量のものを遠くから運ばなくてはいけません。日本で生産するとロットが小さく工賃が割高になりますが、和紙の糸は日本でしか作れないですし、ジャパンデニムは高い技術力を持っています。こうした強みをサプライチェーンに組み込めば、マーケットは日本でなくても環境意識の高い欧米地域に訴求すれば、ビジネスとして成り立つと思っています。現在は日本で生産していますが、ゆくゆくはこの仕組みを他の地域でも展開できるならば、OEMで展開することも検討しています。例えば、東南アジアのタイやアフリカなどサトウキビ産業に紐づく地域に展開ができたらいいですね。

ー回収の仕組みについて

オーダーメイドやシェアリングサービス、最低額保証の買取サービスといった私たちが行っている回収の取り組みは、できる限り製品寿命を最長化するために行っています。加えて製造工程でどうしても出てしまう糸くずや端切れも回収し、廃棄するものと一緒に炭に変え、その炭をサトウキビ畑の土壌改良のために活用することにも取り組んでいます。回収についてはトレーサビリティの観点から洋服にNFCタグを取り付け、気軽にトレース情報を見られるようにし、環境に優しい取り組みの可視化を目指しました。アパレル業界のような製造コストが下がっている業界では、これまで服をトレースするインセンティブがありませんでした。アパレル業界の問題解決、サーキュラーエコノミーを活用しどのようにトレーサビリティをとっていくかということは時間をかけて現在もディスカッションを進めています。現在はプロダクトパスポートという形で、服1着1着のサプライチェーン情報や、アップサイクルをしてくれる方々の情報を蓄積し、それを可視化できるような取り組みを進めています。

必要なのは、「着たくなる」と「着てわかる」

山本氏 (株式会社Rinnovation代表)

ー作る側の責任だけではなく、使う側の責任に対して思っていること

服を着る理由が「環境にいいから」という人はなかなかいません。それ以上にお得感や楽しさのようなユーザーにとってのメリットと状況を作ることが着てもらうために必要です。
そのために、沖縄を体感してもらうための各種体験クーポンの配布を行ったり、SNSで同じ趣味の人と繋がりたいという欲求に対して、エシカルな人と繋がりやすいようなUXデザインを追求したり、着てもらうことで楽しさと繋がりを与え、環境にも貢献しているという状況を作りたいと思っています。

たとえばビジネスや観光で来た方が「かりゆしを買いたいけど沖縄でしか着ないからもったいない」と考えて買わなかったり、逆に買ったはいいものの観光後には全く着なかったり、といった状況がありました。しかしこれは、かりゆしが悪いわけではありません。
着る側はファストファッションに代表される使い捨てのカルチャーが前提にあります。一方で私たちはアパレル産業に所有しない選択肢を作り、その仕組みを見える化して伝えていくことで、消費者側に気付きと、リテラシーを与えたい思っています。

理想から逆算の仕組みづくり

ー現在のサーキュラーエコノミーをどのように形成しましたか。

山本氏 (株式会社Rinnovation代表)

資源が限られている中で作るだけ、売るだけではなく、循環させるということを答えから逆算していった結果、おのずと現在の仕組みが出来上がりました。製品寿命を延ばすためのシェアリングする・回収する・リペアするという方針や、炭にして土壌活性に活用する、という大枠は「作って売るだけではなく循環させる」という目的から実現したいことを考えた結果、出来上がったのです。各工程で環境負荷を減らす取り組みやよりいいものを作るためにまだまだ課題はありますが、これまでもやりたいことを描き、その想いに共感してくださる各社へ相談、連携することでイメージを実現してきました。みなさんが私たちのサトウキビへの思いや、可能性を感じてくれたからこそできたことだと思っています。水質汚染や労働環境など、アパレル業界の問題に対して、今は大丈夫だと思っていますが基準が高くなったときにクリアしているかは常に意識していきたいです。そのために他の企業様と連携共有しながらよりよいフェーズにいくことができれば理想的だなと思います。

問題意識が生む広がりと深まり

ーかりゆしウェアを通して広めたい思い

山本氏 (株式会社Rinnovation代表)

かりゆしは1つの重要なアイテムではありますが、当然それだけで問題が解決できるとは思っていません。沖縄で作り出した私たちの素材やビジネスモデルをより世界に発信していきたいです。もちろん日本というマーケットはありますが、日本ではまだ環境にお金を投資する意識が消費者にないため、より浸透させていくと同時に、ビジネスとして持続的にやっていくためにマーケットを海外にもスケールアップできると嬉しいですね。
今後は「衣食住」という人が生きていくために必要な要素に対して、「衣」の枠組みを超えて、バガスを応用したものを展開することで横への広がりを作っていきたいです。かりゆしの話に限ると、サプライチェーンを見える化することで、観光客がかりゆしの職人さんとつながったり、サトウキビ農家さんで収穫体験をしたり、服を借りるだけではなく、より深く沖縄を知ってもらう観光の体験を豊かにできる仕組みを作っていけるのではと思っています。これからは事業を展開していく中で、ファション性を高めたり、コラボレーションの可能性も追求していけたらと思っています。

「ZERO PC」は、環境負荷ゼロを目指すと共に、製造の過程でも「難民」という問題に取り組んでいる製品であることが評価され、CHOICE! ZERO WASTE AWARD2021 の認定製品となりました。今回はピープルポート株式会社代表の青山様に製品の生まれた背景やゼロウェイストへのこだわり、広めたい想いについてお話を聞かせていただきました。

「環境問題は無視できない」と覚悟を示した

-改めてこの製品が生まれた背景や想いをお聞かせください。

青山氏 (ピープルポート株式会社 代表)

もともと紛争問題に関心があり、日本にも難民という立場で避難してきている人たちがいて、なんとか力になれないかと思い創業しました。事業をつくる時に、大きく3つのことを考慮しました。ひとつめは、基本的に避難している人たちは日本語が話せないので、日本語が話せなくても事業の主軸として活躍できる事業であることです。ふたつめは、技術が身につくもの。避難している人たちが国に帰ったときに、すぐに生計が立てられることを考えました。最後に、日本の課題に対して貢献することです。未だ難民はネガティブなイメージを持たれていたり、あまり関心を持っていただけないことがあります。そういった難民に対する見方を、ありがとうという言葉を集めることによって変えていけるのではないかと思っています。以上の3つを踏まえて、見つけたキーワードが都市鉱山です。都市鉱山は、廃棄されたり、家庭で眠ってしまっている電子機器の中には希少金属が大量に含まれていることをいいます。最初は、そういった電子機器を集めて、リサイクルをしようと思っていました。分解なら言語も必要なく、電子機器はどの国にもあるから、学んだことをどこでも活かすことができる。実際に始める前は、リサイクルが99%くらいで、再利用できるものが1%くらいあればラッキーくらいだろうと想像していたんです。しかし、いざ集め出してみたら、現実は全く違っていました。リサイクルが70%、リユースできるのが30%くらいあったんです。これは、リサイクルするのももったいない。あるものをできるだけ生かしたまま使う、リユースの方がいいと思ったのが再生事業へ舵を切るきっかけになりました。

-ZERO PC は2020年にリブランディングしたそうですね。

青山氏 (ピープルポート株式会社 代表)

はい、自分たちの覚悟を示すためのリブランディングでした。パソコン一本で再生事業やろうと決め、改めて自分たちが扱っているパソコンはどのくらい環境負荷がかかっているのか調べました。二酸化炭素は、製造のときに一番排出されます。メーカによって数値は違うのですが、製造での二酸化炭素排出量は300キログラム相当。また、半導体の洗浄などで、水を大量に使用するんですね。少なくても1台につき、およそ7万リットル。鉱物を採掘するために、森を切って、ダムをつくるという上流までさかのぼると、19万リットルというデータも出ているんです。さらに鉱物の中には、武装勢力の資金源になっている紛争鉱物も混ざっています。恥ずかしながら、人と環境への悪影響を改めて知りました。私たちは難民問題に関わっているけれど、環境問題は全人類関わっています。さらに、間伐、水害によって故郷を追われる環境難民も出始めています。難民という立場の仲間と事業をやる上で環境問題は絶対に無視できない。環境と難民、この2つのZEROを目指そうという覚悟を表に出しました。

ビジネスは社会をよくするための手段

本アワードは現代社会が抱える大量生産・大量消費、そして大量廃棄の問題を「捨てる」という行為から見直すため「捨てない」ためのアイデアを形にした商品やサービスを選択し、ゼロ・ウェイストな社会をみんなで目指していこうというのがプロジェクトの趣旨です。

審査基準には、大きく分けて原材料の循環性、生産の持続性、日々の暮らしへの浸透性の3つがあります。その上で、「透明性」への意識と、製品自体の回収、再生する仕組みが重視されています。
特にZERO PCは、環境への負荷ゼロを目指すエシカルパソコンとして、廃棄されたパソコンを回収し、修理可能な製品は中身を入れ替えて販売、使えなくなった部品までもすべてリサイクルを行っている点が評価されました。

-本アワードの審査基準で重要な評価基準になりました、ゼロウエイストへのこだわりを改めてお聞かせください。

青山氏 (ピープルポート株式会社 代表)

まず元々の思想が「人や、環境・地球にとっていいかどうか」というところが出発点です。なにかを犠牲にして儲けるようなことは、前提としてありません。あくまで社会を良くする手段として、ビジネスがあると考えています。そのため、回収まで含めたビジネスモデルは、始めから構想に組み込まれていました。

ひとつ目のこだわりとして、原材料として引き取ってくるパソコンは、故障していても、動かなくなっていてもどんな状態でも全て引き取るということです。単純な中古品の買取・販売との違いでもあります。もうひとつのこだわりは、透明性です。ここは課題でもあるのですが、分解してリサイクルにあてた資源がどう使われているのか、全て追い切れていない現状があります。原材料に関しても、自社で監修するものはわかっているのですが、製造会社がどういうルートで仕入れてきて、どうやって作っているのかまではまだ追えていません。パソコンメーカーの金属素材は、分解すると数百の部品に分かれていて、その仕入れ先に関しても製造企業の8割が「答えられない(あるいはわからない)」と回答しているのが現状です。ここを調べ上げるには、とてつもない労力がかかるので、時間をかけてひとつひとつ、追っていかなければと感じています。

未来に対して重みがある若い世代が声をあげる

-ゼロウェイストな選択肢を増やすために、「作る責任」「使う責任」についてお聞かせください。

青山氏 (ピープルポート株式会社 代表)

使い捨てで儲けるビジネスモデルからは脱却しなければいけないと思います。既存のやり方は楽なので維持したいと思うけれど、次の世代のことを考えるとこのビジネスモデルは絶対に続かないですよね。ここは、若い世代の人がより気持ちがこもって取り組める部分じゃないかなと思います。今のままでどうリスクを取らずに逃げ切れるかではなく、次の世代に引き継いでいく未来として使い捨ての設計でいいのか、我々若い世代が声を上げていかなければいけないと思います。

「使う責任」については、大きく2つあるかなと思います。ひとつは、意識の問題。小さな話ですが、スーパーでゴミ袋をもらうか、あるいはマイバック、裸で商品を持って帰るか、そういった意識を持つことはすごく重要です。では、どうやったら意識を持ちやすくなるかというと、自分の行動で次何が起こるか、背景や次にあることをイメージして思いやれるかどうかだと思います。そのため、「パソコンってどうやって作られているか知っていますか?」という背景を知るプロジェクトを行なっています。人の意識を変えるには時間がかかるので、伝え方の工夫が必要になります。古着よりもヴィンテージという言葉の方がかっこよくて買いたくなるように、中古パソコンではなく、エシカルパソコンという新たな価値を提唱することで、今まで買わなった人たちが買いたくなる導線をつくっていくことが大切だと考えています。

環境に興味がない人にこそ届けたい

-ZERO PCを通して広めたい想い

青山氏 (ピープルポート株式会社 代表)

難民という課題に対しての思いもあるので、両方をひっくるめて“多文化共生”を作っていきたいです。「パソコンは新品だよね」というひとつの価値観ではなく、「人に配慮しているものっていいよね」「再生品っていいよね」といういろんな価値観を増やしていくことで、ものの寿命は伸びると思っています。人においても、マイノリティーに対しての理解がある。そういう社会を作っていきたいです。こういった文脈でいうとむしろ、全くエシカルやサステナブルを意識してない人にこそ、この製品を選んで欲しいと思っています。全くそういった意識をしていない人たちが、この製品をきっかけに、社会課題に対しての気づきを得てもらえたらとても嬉しい。多くの人に提供できるパソコンという製品を通じて事業をやっている存在意義は、消費者の人たちに対して「あ、環境って今こういうことになっているんだ」「地球にはこんな人たちがいるんだ」というような気づきを得てもらうことだと思っています。私たちは、ビジネスとしてプロダクトを持っていることで社会課題に接点を持っているんです。そこに価値提供できる強みをいかしていきたいと思っています。

2021年5月30日(ゴミゼロの日)、CHOICE! ZERO WASTE AWARD2021 の「認定製品発表・カンファレンス」を実施した。 ZERO WASTE DESIGNをビジョンに掲げる石坂産業株式会社の産業廃棄物処理の現場である「再資源化プラント」を会場に、第1部では運営メンバーより本プロジェクトの目的と環境にかける想いが語られ、第2部ではアワードの審査のポイント、認定製品の発表および講評が行われた。

CHOICE! ZERO WASTEプロジェクトについて

プロジェクトの目的は認定ではなく、社会が今よりすこし良くなること。

田口 (株式会社ボーダレスジャパン)

まずはじめに、CHOICE! ZERO WASTE AWARD の目的についてお話したいと思います。このプロジェクトは『SUTE.lab(ステラボ)』という団体が運営しています。石坂産業株式会社の、石坂社長をはじめとして、環境問題について想いのある有志のメンバーが集まって、なにかできることはないか、一緒に考え始めたのがきっかけでした。

まずは、産業廃棄物を扱う石坂産業さんがいることもあって、「捨てる」という行為から見直してみようという話になりました。今までの社会は、効率良く生産し、できる限り安くつくれることで、競争してきました。その結果生まれたのが、現代の大量生産・大量消費、そして大量廃棄の社会かなと思っています。つまり、作っては捨てるの繰り返しです。そういう一方通行の社会から、これからは、循環型の社会へ転換しないといけません。今のようなやり方では、地球の資源はいくらあっても足りないからです。人類みんなが、そしてこの地球に生きる全ての生き物が、持続可能に暮らしていく為に、僕らはなにをはじめたらいいのか。そう考えたときに、作っては捨てるという行為の、「捨てる」という側の行為から、物作りを改めて考えていく必要があるんじゃないかなと思ったんです。

この「捨てない」というアイデアを形にした商品やサービスをみんなで選択していくことで、ゼロ・ウェイストな社会をみんなで目指していこうというのがプロジェクトの趣旨になります。そのため、製品を認定することだけが目的ではありません。その製品が広まることで社会が良くなる、そんなものを探していこう。そしてみんなに選んでもらえるようにしていこう。そんな製品を募集して、皆さんが手に取れる日常の選択肢を提示していこうと思っています。

参加の経緯と環境にかける想い

プロジェクトメンバーより、環境問題や本プロジェクトにかける想いを聞いた。

捨てるときのことを考えて作っていない、と知った衝撃。

田口 (株式会社ボーダレスジャパン)

石坂産業株式会社の石坂社長と、はじめてお会いした時に「みんな捨てる時のことを考えて作っていないんだよね。」という言葉に出会ったこと。それが、僕がこのプロジェクトに参加するきっかけでした。ゴミがいきつく、最後の地点を担う産業廃棄業において、ゼロ・ウェイストに取り組まれる石坂さんが「より安く、より強く作ることだけを考え始める中で、次に再生していくことがどんどん難しくなっている。捨てる時のことを考えて作ってくれないと、いくら安くて強い物を作ってもダメなんだよね」と仰っていました。この話を聞いた時に凄く衝撃を受けました。

そこから、自分自身にもできることを考えるようになり、プロジェクトメンバーみんなで定期的に集まっては議論をし、このプロジェクトを続けてきました。そして晴れて今日、こうして皆さんにその一部をお披露目できることをとても嬉しく思っています。

「遊び場」としての地球を良くしていきたい。

田部井 (株式会社タベイプランニング)

私は普段、アウトドアとスポーツ、フィットネスを、「遊び」という観点で捉えながらプロジェクトを色々進めて、体を動かすことの大切さを伝えていくような事業をしております。その中で東日本大震災以降、東北の高校生を富士山に連れて行こうというプロジェクトをやっています。その活動の中で、環境や自然の大切さを知ってもらえたら良いなという想いが強くなりました。子供達は、遊び場は絶対に汚さないと思うんです。その「遊び場」が地球全体になれば「地球の環境を良くしていきたいな」と思うのではないでしょうか。皆さんと色んなことを考えながら、未来の地球にとって良い物を残していけるような活動にしていきたいと思っています。

僕らの世代で、美しい風景をつくる。

春山 (株式会社YAMAP)

私は、田口さんから「凄い会社がある、石坂産業という物凄いかっこいい会社があるから」と紹介して頂いて、埼玉県所沢市にある石坂産業さんにお邪魔をしました。その時に「捨てる」という現場から物作りや社会を見ていると、こんなにいびつになっているんだと、非常に衝撃を受けたんです。石坂産業さんは、この廃棄物処理プラントの傍らに、非常に綺麗な里山を作っていらっしゃいます。その景色を見たときに「ゴミを資源化・再利用する、という取り組みだけではなくて、美しい風景を作るということをやっていかないといけない」と強く感じたんです。環境は、生きている限り、僕ら一人ひとりが関わることで、どの企業にも環境を守る責務があると思っています。その観点を大事にする為にも、一般の人がわかりやすく「捨てる」ということ自体を見つめ直す取り組みに共感するような社会になっていってほしいと感じます。

ものづくりの最後まで、考えてデザインしていく。

(株式会社電通)

普段はクリエイティブディレクターとアートディレクターとして、色んな企業さんの商品開発のお手伝いだったりとかブランディングをやっています。しかし正直、僕はこれまでゼロウェイストやサステナブルに意識高く実践できている人間じゃなかったと思うんです。ただ、近年の環境問題を目にして何かアクションを起こしたいなと思っていました。クリエイティブの業界では、自分が作る作品や商品の完成度や美しさ、機能性みたいなものを優先させて、それらが捨てられた後のことや環境負荷まで、配慮が行き届いていない現状があります。そんなこれまでの反省を含めて、これからはものづくりの最後に行き着くところまで考えてデザインする、というところも、クリエイターの役割になってくるんだろうなと思います。

生まれ変わるストーリーまで、デザインする。

望月 (REDD inc.)

私自身は、榊さんともかなり近く、商品を売っていくプロモーションであるとか、物をつくって皆さんに知ってもらうことのお手伝いに携わってきました。今回、プロジェクトメンバーと議論する中で、1つの研究所のような形で、捨てるというそもそもの概念から考え、つくっていきました。物をつくり、誰かに使われて、そしてまた生まれ変わっていくストーリーそのものをデザインする、ということに私自身も共感をしました。

審査について

(株式会社電通)

今回認定された製品は、どれもがそれ一つでゼロウェイストを成し遂げていると言い切れる物ではありません。製品に使用している原材料、生産のプロセス、製品の耐久性、廃棄と回収の仕組み、再生して販売する仕組み、その全てにおいて完全な製品は世の中にまだまだ少ないというのが現実です。物理的に難しいものもあると思います。しかしその中で、物作りの課題を誠実に捉え、これまでの生産の習慣を変えていこうとする企業があります。たとえ今は不完全だとしても、ゼロウェイストというビジョンに向けてできることは全て取り入れ、現段階で至らない点を曖昧にせず、消費者に対して透明性を高く自社の取り組みを伝えている企業です。そのような企業の思想やビジョンと、製品のアイデアや工夫を広く伝えることで、ゼロウェイストな物作りを目指す生産者やデザイナーの方々にとって、今回のアワードが刺激に繋がればいいなと思います。ユーザーや消費者、生産者まで、全体のゼロウェイストの意識を底上げし、大きな循環が生まれるようなきっかけになれば幸いです。

3つの審査基準

①原材料の循環

自然由来・再生可能などプロダクト及びプロダクト周辺の包装材や原材料の「循環性」

②生産の持続性

生産過程で消費するエネルギーのクリーンさや、フェアトレードの視点、事業としての持続性や伝統文化の継承などを踏まえた「持続性」

③日々の暮らしの浸透性

デザインの美しさ、使い勝手の良さ、続けたくなるアイデアなど、ライフスタイルへの「浸透性」

2つの重視ポイント

①「ゼロウェイストについての考え方」

廃棄物、副産物などを再利用するなどして製品をつくるだけでなく、その製品自体が廃棄されゴミにならないように回収をし、再生する仕組みがあり、運用されている、またはされ始めていること。

②「透明性」への意識

原料~製造~回収の全プロセスにおいて、透明性を高く意識して取り組むとともに、消費者に対して製品に込めた思いや背景、課題を伝え、啓蒙に取り組んでいること。

(株式会社電通)

実際に審査させて頂いていると、廃棄物を再利用してゴミを減らすという製品は多い一方で、その製品自体を回収しているものは少ないです。その製品自体の廃棄がどうなっていくのかを追い切れていないものは多くありました。また、自然由来の製品で廃棄後は土に還ると謳っている物も多くあったのですが、廃棄することによって土壌が改善することがあるかについても気にしました。今回認定が見送りになった製品も、より環境負荷の低い製品にバージョンアップされたタイミングで、是非また応募頂けたら嬉しいです。

認定製品について

第一回「CHOICE! ZERO WASTE AWARD」では、ご応募いただいた製品の中から、11製品をノミネートとし、さらにそこから、2つの製品を認定することになりました。認定製品は、「ZERO PC」と「アップサイクルかりゆし」です。

ピープルポート株式会社「ZERO PC」

環境への負荷ゼロを目指すエシカルパソコン。廃棄されたパソコンを回収し、修理可能な製品は中身を入れ替えて販売、使えなくなった部品までもすべてリサイクルを行っている。

評価ポイント

環境負荷ゼロを目指すと共に、製造の過程でも「難民」という問題に取り組んでいる製品であることが評価されています。細かい審査の内容については、下記の5つの点が評価されて認定に至りました。

①長寿命の部品に関してはリユース品をそのまま使用し、心臓部品に関しては新品の部品を使用することで、できる限り長く使えるように工夫されている点。

②部品交換によって発生した古い部品、修理できない製品についても全てリサイクルを行っているビジネスモデル。

③アップサイクル工場では、100%自然エネルギーを使用されている。製品自体の梱包もプラスチックの緩衝材等を使用していない点。

④受け入れ元の企業の公開や、パソコンを再生するアップサイクル工場の見学受け入れ、使用電力の明示など情報の透明性に積極的に取り組んでいる点。

⑤事業を通して日本に「難民」として避難してきた人達が安心して働ける場を創出するとともに、パソコンに使用されている紛争鉱物を循環させることで、紛争解決への貢献も目指している点。

製品の講評

時代のニーズにあった取り組み

望月 (REDD inc.)

新しいパソコンを作って売るというモデルではなく、リサイクルすることによって、CO2の排出が90%削減できるというのが一つ大きなメリットかなと思います。日本中・世界中には使われなくなったパソコンはかなりの数あると思うんです。また今後は、教育の現場でパソコンの利用がもっと盛んになってくると思います。そういった中で、使われなくなった物を回収するシステムを整え、環境負荷の低い形で製品を届けるように全部デザインされている点が評価ポイントかなと思います。

また、難民の方に対して日本語を教える、日本で生きていくためのパートナーさんを探すといった、事業を通して様々な人と人の繋がりをデザインする点も評価のポイントです。

エシカルパソコンという新たな価値観

(株式会社電通)

ユーザー視点でこれは素晴らしいなと思ったことを2つほどお話します。1つはエシカルパソコンという新しい市場を作ったことが素晴らしいと思います。パソコンは新品を買うことが基本的には当たり前の市場ですよね。毎年1個か2個の新商品が出て、OSがアップデートされたり、周辺機器が合わなくなったりで、本体を新しいものに買い替えないといけない。「まだ使えるんだけど」という罪悪感をみんな持ってると思うんですよね。だから、リサイクルのエシカルパソコンという存在は、かなりニーズがあるのではないでしょうか。ここに目を付けたところが素晴らしいと思います。今後、最新のパソコンを持っていることがステータスではなくて、自分の愛着のあるパソコンの中身をアップデート・アップサイクルしながら使っていくことがかっこいい、という価値観が定着するきっかけになるのではないかなと思います。

チョイスしやすい工夫

もう1つは、ユーザー設計デザインが素晴らしい点です。「ZERO PC」のWEBサイトを見ると、物凄くチョイスしやすい工夫があるんです。「ZERO PC」を選ぶ時の不安って壊れないかなとか、回収された時に自分の大事なデータがちゃんと破棄されるのかなとかだと思うんですよね。それをWEBサイトで丁寧にわかりやすく説明しています。具体的には、1週間無料のお試しやLINE相談、無料のデータ消去など、購入時の不安を上手く払拭し、商品を乗り換えるハードルを下げています。結局、ゼロウェイストやサステナブル系の商品って、社会意義や思想だけ語ってもユーザーはついてこない。だから、ユーザー側にメリットがあるやり方を提供していることが素晴らしいなと思いました。

望月 (REDD inc.)

そうですね。実際に商品を選ぶ楽しみやカスタムしていくことは、ユーザーに任されています。

(株式会社電通)

その点で言うと「ZERO PC」の商品の選び方がわかりやすい。メールとインターネットを主に使う人用、リモートワークをする人用、映像制作など大容量を使うクリエイター用と分かれている。中古のリサイクルパソコンを買う層って、最新機器を求めるようなギークではないじゃないですか。だから、パソコンのスペックではなくて、用途で選べる設計の仕方も、中古でいいやと思っている人のニーズとちょうどマッチした選択のさせ方になっていて上手いなと思いました。

株式会社リノベーション「アップサイクルかりゆし」

サトウキビの搾りかすである「バガス」を使用した環境負荷の少ないかりゆしウェア。製品寿命を最大限伸ばすため、シェアリングでのサービスをメインに展開している。

評価ポイント

未利用資源になっていた「バガス」を原料に、環境負荷が少ない生産工程で、独自素材を開発、活用し、さらには、回収する仕組みを整え、循環性・持続性がある点が評価されています。細かい審査の内容については、下記の3つの点が評価されて認定に至りました。

①バガスをアップサイクルすることだけに留まるのではなく、製品寿命をできる限り最大限伸ばす為にシェアリングでのサービス提供をメインにしている点。購入を希望するお客様に対しても買い取りの保証を提供したり、提供したウェアの回収まで責任を持って取り組んでいる姿勢。

②サプライヤーに関して、環境への取り組みを行う企業を選定してサプライチェーンを構築。また、企業間の情報共有はもちろん、ウェアにもICタグを埋め込むことでトレーサビリティを確保しつつ、消費者がICタグを読み取ることで、WEB上でサプライチェーンを確認できる情報発信をしている点。さらに、素材から製造、回収まで一貫して透明性を追求している点。

③最終的に着用が難しくなったウェアに関しては、土壌改良材として炭化することで再びバガスが生まれたサトウキビ畑へ循環させるシステム。サトウキビ畑から生まれたものをサトウキビ畑に還す循環により、ファッション業界のこれからの在り方としてのサーキュラーエコノミーのモデルの確立に力を入れている点。

製品の講評

時代のニーズにあった取り組み

望月 (REDD inc.)

こちら今着衣していて、涼しくて着心地もかなり良い。張りもあって非常に高級感のあるウェアと思います。製品が生まれたストーリーを拝見すると、世界最大の農産物であるサトウキビは、地球上のCO2のかなりの量を循環していて、環境にはなくてはならないものなんです。しかし、日本のサトウキビ畑も平成の初期と比べたらかなり減少しているのが現状です。イノベーションさんは製品を通じて、沖縄を土壌にしたサトウキビ畑を守り育て、増やしていく為に自分達が何ができるかを考えられています。そのため、このウェアは最終的に焼却するのではなく、炭化して土壌に還すんですね。土にただ戻るのではなくて、土を育てて強くすることも踏まえて、製品が生き、次の製品に変わるストーリーなんです。長い目で見た時に沖縄が育っていくことに取り組んでいることが素晴らしいと思います。また、サトウキビで得た知見をリンゴなどの他の作物に活かしていけないかと考えられています。先のストーリーを見据えながら、まずはサトウキビという身近なところからアプローチする取り組みは本当に素晴らしいと思います。

商品としての完成度の高さ

(株式会社電通)

本当にこの服は、完成度が凄いですよね。バガスが20%から30%織り込まれているということで、実際どうなのかなと思っていました。けれど、実物を触って着てみると、軽くて、凄く張りがあって高級かりゆしですよね。いわゆるサステナブルとかゼロウェイストの必要を知らなくても欲しくなる、その入口を作っていること素晴らしい。結局、どんなに思想が素晴らしくてもお客さんが欲しい、使い続けたいと思わないと、ビジネスとしてサステナブルではないし、ゼロウェイストの輪が広がっていかない。そういう意味で服としての完成度が素晴らしい。

もう一つ、お客さんの購入体験がしっかりデザインされていますよね。買うだけではなくて、シェアリングやサブスクリプションの選択肢があり、必要な用途に応じて買い方を選べることが凄く良いなと思います。僕も沖縄に行った時に、かりゆしをせっかくだから買いたい気分になるのですが、絶対その時しか着ないじゃないですか(笑)。絶対と言ったら失礼ですけど、その時だけのものになるにはもったいないから、買わなかった経験が何度かあるんです。シェアリングやサブスクの選び方だと多分手は伸びていただろうなと思うと、ビジネス的にも成り立ちます。観光客が買うニーズを見越し、お客さんの楽しさに繋げる設計が凄く秀逸だと思いました。

ビジョンとアクションの明確さ

(株式会社電通)

もうひとつ、ビジョンとアクションの明確さが、説得力に繋がっていると思います。沖縄の基幹産業であるサトウキビの廃棄物が物凄く多いから、沖縄を活性化させたいという大きな共感するビジョンがある。さらに、世界最大の農作物でるサトウキビで、このアパレル産業の大量生産・大量消費を大きく解決できるかもしれないインパクトがあるように感じることができる。それに加えて、製品の回収や買い取り保証、廃棄は燃焼ではなく炭化させて肥料にし、ICタグを付けてトレーサビリティも含めて確保する取り組み。ビジョンとそれを実現する為のアクションがひとつながりで実践していることに凄く本気度を感じます。

望月 (REDD inc.)

実際に、ボタン1つにもバガスが織り込まれていたり、ポケット部分の裏布にかりゆしウェアの端切れを使われているなど、伝統で作られる際に生まれた副産物をちゃんと活用しています。これまで培ってきた伝統を上手く形として取り込み、新しい形の生産に繋げています。さらに、服飾を作られたいメーカーさんが沖縄に限らずこの生地を使って生産できるように仲間を増やして、バリューネットワークを作る形で取り組んでいます。やはりこのビジョンに共感性が高いというのは非常に強いかなと思います。

終わりに

(株式会社電通)

応募製品を拝見し、ここまで徹底してやっているのか、とすごく驚きました。認定やノミネートに至った製品には、未来の為に本気でサステナブルな社会を作るんだという強い意志と、その実現のための徹底した工夫を感じました。ゼロウェイストな製品を作ることを越え、循環型社会をどうやって創るのかという視点まで行き届いている点が大きなポイントだったと思います。昨今、サステナブルな取り組みを始めている企業も多いですが、大手企業においても、このレベルの意識でやり切ることができれば、社会的なインパクトが生まれるのではないでしょうか。

望月 (REDD inc.)

今回認定に至らなかった製品についても、本当に素晴らしい点が多々ありました。今回の結果は、あくまで1つの指標です。CHOICE! ZERO WASTE AWARD 自体も今年が初めての取り組みであり、まだまだ成長の過程にあります。ゼロウェイストな社会の実現に向けて、ご応募いただいた企業の皆様と共に、私たちも成長していけたらと思っています。